10.まとめ

 以上のように本研究では、学生に対するアンケート調査から得た「オンライン上に板書が提示され、それを見ながら講義を受けノート記述を行う手法と、授業後に行われる確認テストが、学生自信の理解度向上に最も有効である」との知見から、『ネットワークを介した情報提示とリアルタイムオンライン確認テストを講義中に随時実施する講義スタイル』の提案を行った。また、提案した講義システムを開発し、実際の講義で運用を行い、体験した学生から本システムに対する印象をオンラインアンケートを通して取得した。結果、2学部の学生に対する運用と印象評価アンケート結果から、本講義システムが実際に運用に耐えうることを確認し、また、他の教育機関においても利用可能な汎用性を有していることを確認した。また本講義システムでは、学生の理解度の把握を目的としていたが、本講義システムの中核となる「講義中に随時実施するリアルタイムオンライン試験結果と、各種指標の相関関係」を求めた結果、「現状の本講義システムで把握できているのは、学生の講義への参加姿勢」であるとの知見を得るに至った。
 以上の成果はIT技術を、実際の講義の場における教員と多人数学生の質の高いコミュニケーションに役立てる仕組み作りになったといえ、教員からの一方的な教示になりがちな多人数学生向けの講義科目のあり方を考える上で、学術的な意義のあるものになったといえる。

11.今後の展望

 今後は、学生の理解度をより高い精度で把握することを目的に新しい仕組みを検討するとともに、IT技術を用いることによる講義の質の向上をさらにはかっていく。また、コンピュータが学生の人数分準備できなければ本教育システムは利用できないといった問題に対し、携帯電話やMP3プレイヤ等のモバイルディバイスで、本システムを利用可能にする展開を、検討中である。
 本研究は、平成19 - 20年 科研費(若手研究(B))(課題番号:19700649)の助成を受けたものである。

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