3.本研究の経緯

 本研究では、理想的な講義スタイルを模索するには、各大学の学生の「講義を受講する」ということに対する資質・能力・趣向の把握を行った上で、理想の講義スタイルを見出すべきと考え、図4のように講義スタイルを「教員の情報提示方法」と「学生の受講方法」といった2面から捉え調査を行ってきた。

図4
図4 本研究における講義スタイルの考え方

 具体的には、静岡産業大学 情報学部において、2005年度前期、同年後期、2006年前期の3期間にて4つの概論系講義を行うにあたり、4つの異なった講義スタイルをもちいてその印象に関する調査を行った[注6]。また、同大で行われているFDに関する研究会の報告書(ティーチングメッソド研究会報告書3,4,5)やシラバスを元に、講義スタイルの1要素として考えられる最小単位を抽出した(図5)。これらの最小単位の個々に対し、同大学情報学部学生がどのような印象を抱いているかをアンケート調査により明かにした。

図5
図5 講義スタイルの細分化結果

 以上の調査結果から得られた知見をもとに、静岡産業大学情報学部の学生にとって有効と考えられる講義スタイルを、仮説として以下のようにまとめた。(図6参照)

図6
図6 有効であると仮定した講義スタイル

 A.教員はWebを通して板書を含む情報の提示を行いながら話す。B.学生は手元のコンピュータ画面を通して教員の提示する情報を閲覧しながら、自由記述によるノート取りを行う。C.オンライン上で行う確認テストを講義内の各所に取り入れ、学生の理解度をリアルタイムに把握しながら講義を進める。
 さらに、前述の講義スタイルの実現には、「リアルタイムに個人認証を行う技術」「リアルタイムに複数のデータ処理を行う技術」の技術開発が不可欠であるとし、『オンライン出席確認システム』『リアルタイム集団評価システム』の開発を行い、図6に示した講義スタイルを実際に運用可能なシステムを開発してきた。

4.本研究の目的

 静岡産業大学 情報学部の学生にとって理想と考え開発した講義システムを、札幌市立大学 看護学部の学生に対して利用(運用)することを通して、本講義システムが実際に運用に耐えうるか、また、他の教育機関においても利用可能な汎用性の高さを有しているかを検証することが本研究の目的である。

12.注・参考文献
[注6] 柿山浩一郎:概論系科目における講義スタイルの検証〜ツール開発の為の基礎データ収集〜、静岡産業大学 情報学部 研究紀要第9号、2007.1

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