8.アンケート結果

 図17は「教員の情報提示方法」に対する情報学部の学生(静岡産業大学)と看護学部の学生(札幌市立大学)の評価結果(比較)である。また同様に、図18は「学生の受講方法」に対する評価結果(比較)である。水色が情報学部学生を、ピンク色が看護学部学生を示しており、右肩上がりになれば、評価が高いことになる)

図17
図17 「教員の情報提示方法」に対する情報学部学生と看護学部学生の評価結果(比較)

図18
図18 「学生の受講方法」に対する情報学部学生と看護学部学生の評価結果(比較)

 また、学生の成績(出席得点を含む)と、学生の本システムに対するアクセスログ(講義中にリアルタイム実施した試験結果)をもとに多方面から相関関係を調べた。その結果、

  1. 講義中にリアルタイムに実施した試験に対する解答である「リアルタム試験得点合計(3回分)(点)」と一般的なペーパーテスト形式で実施した「小テストの合計得点」には相関が見られなかった(相関係数=0.300)。
  2. 「リアルタム試験得点合計(3回分)(点)」と本講義の単位認定に用いた「総合評価得点」との間にも明確な相関は見られなかった(相関係数=0.269)
  3. 図19のように、「リアルタム試験得点合計(3回分)(点)」と「全15回の出席回数」の間には、中程度の相関(相関係数=0.503)がみられた。
  4. また、図20のように「教員は学生の理解度を把握しながら講義を進めるべきかどうか」とのアンケート設問に対する回答結果と、「出席回数」および「小テストの合計得点」に各々中程度の相関(相関係数=-0.553、-0.453)がみられた。

図19
図19 相関関係1

図20
図20 相関関係2

9.考察

 本研究の目的は、静岡産業大学 情報学部の学生にとって理想的と考え開発した講義システムを、札幌市立大学 看護学部の学生に対して利用(運用)することを通して、本講義システムが実際に運用に耐えうるか、また、他の教育機関においても利用可能な汎用性の高さを有しているかを検証することである。
 図17、18において、グレーの枠で囲んだものは、「Web上で教材を提示する、確認テストを実施する、コンピュータでノートを記述する」といった、本教育システムを構成する基本的な要素だが、情報学部と看護学部の学生を比較してみても、大きな違いが無いことがわかる。両学部の違いとして単純にイメージされるのはコンピュータへの精通度合いであるが、学生が情報を取得する、ノートを記述する等の講義受講の基本的な手法に関しては、コンピュータを利用することが弊害にはならないといえる。また「確認テストの実施」が、学生の受講方法として高く評価されている。この点も、確認テストをこまめに実施する本講義システムが有効になり得ると考えられる。以上の点は、一般的に考え情報学部の学生に比べコンピュータを不得意とするであろう看護学部の学生にとっても、本教育システムが受け入れられることを示している。
 また、図17,18の黄色い枠で囲んだ要素に関しては、情報学部学生と看護学部学生とでは、評価の結果に差が見られるものである。より、対面コミュニケーション能力が求められるであろう看護学部の学生が、「話す、聞く」を高く評価している点が興味深い。

 また、前述の「8.アンケート結果」では、4つの相関関係について、記述した。この内、1と2のように、本講義システムの中核である講義中にリアルタイムに実施した試験に対する解答と、学生の理解度を示すであろう「小テストの合計得点」や「総合評価」の間には、明確な相関関係は見られなかったが、3のように、「出席回数」とは相関があることがわかった。これは、現状の本講義システムで把握できているのは「理解度」ではなく、「学生の講義への参加姿勢」である可能性を示していると考えられる。
 4に関しては、「教員は学生の理解度を把握しながら講義を進めるべきかどうか」とのアンケート設問に対する回答結果と、「出席回数」および、「小テストの合計得点」に中程度の相関が見られたという結果であるが、これは講義の成績の良い前向な学生ほど、本教育システムを高く評価していることを示しているものと考えられる。

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